なぜセルサイドの人間はCFAを取得すべきではないか(デメリット)

2022/05に受験したCFAに対する恨み節をここに記す

理由1:そこまでキャリアアップに有効ではない

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CFAを持っていたからと言って外資系バイサイドで数千万円自動的に稼げるわけではない。1000万円前後の仕事が相場。

CFAは有用ですか?との質問への答え:

Is CFA really worth it, especially in India? Why or why not? - Quora

理由2:内容が面白くなく、非実用的なものが多い

Q:IFRSとUS GAAPで、LeaseはCash flow statementでそれぞれどのように分類されるか?

A:元本部分はIFRS、US GAAP両方Cash flow from financingだが、金利部分はIFRSではOperating Cash FlowかFinancing Cash Flowのどちらか、US GAAPではOperating Cash Flowに分類する必要がある

このような95%の日本の金融勤務の人間には関係ない知識を数千個くらい覚える必要があるのがこのCFAという資格。自分がアメリカ人なら良いが、日本で日本企業をメインに見ている私には勉強内容の半分に全く興味が持てなかった。

それゆえ、CFAホルダーの運用するポートフォリオは、そうでないポートフォリオをアンダーパフォームすることがわかっている

www.bloomberg.co.jp

理由3:受験費用が高いだけでなく、毎年維持費がかかる

受験費用は登録費などを合わせるとLevel 1だけでも14万円ほどかかり、晴れて合格しても毎年数万円会費を支払う必要がある。「会社が払ってくれるから大丈夫」と気軽な気持ちでいた私だが、合格しないと会社が費用を負担してくれないので、途中で嫌になっても泣きながらテスト勉強を続ける羽目になってしまった。名刺にCFA Holderと書くのは、私は資格ビジネスに数十万円を費やし、さらに毎年数万円カモられているアホですと宣伝しているようなもの

理由4:名刺にCFA Holderと書けてもあまり良いことがない

知名度の低さ、非実用的なコース内容から、「CFA持ってます」と言っても「ふ~ん、勉強熱心なんだね」以上の感想が出てこない。

理由5:他に勉強すべきことが沢山ある

「CFAあって損はないよ」と言われて始めたCFA。確かにCFAを取得しても「損」はしないが、この時間を他のことに充てていれば、という機会損失が大きい。統計学、経済学を勉強したければ大学の教科書を読めば良く、経済動向について知りたければFinancial Timesを読み、丸善で買った分厚い本を読むのが効率的で、データサイエンスを勉強したいならCourseraで無料の上質なコースが沢山ある。

理由6:体系的に学問を勉強できないので、「知ってる気」になって終わり

覚えることが多いので、結果暗記勉強になって終わり。なぜそうなっているのか?を深く考えている時間はなく、IFRSとUS GAAP会計基準の細かい違いについて丸暗記しなければいけないテスト。

理由7:興味のない分野についてひたすら勉強させられる

私は株サイドの人間だが、CFAではヘドが出るくらい債権の勉強をさせられた。「広い知識がついていいじゃん」と思う方は、"bond equivalent yield"と"annualized yield calculated based on a 360-day year"と"effective annual yield"の違いの知識をつけることでどれだけ自分にメリットがあるか考えてほしい。

理由8:問題文が運転免許試験並みに破綻している

例題:Balance-sheet-based accruals ratio が 以下のようであった。

2023 2022 2021
Balance-sheet-based accruals ratio (%) –7.9 –3.8 3.1

この指標はTrending Lower? Trending Higher?

答え:Trending Higher. なぜならAccruals ratioは0より離れていると悪化なので、絶対値で考えるべき。

!?!?!?!?!?

Q:交差点を曲がるときは歩行者に注意すべきである

A:✕。歩行者には常に注意すべきである。

並に理不尽な回答。これに数十万円払いますか?

理由8:必要勉強時間が日本で1/3程度過小評価されている

日本語でCFAの勉強時間を調べると300時間x3=900時間と出てきて、USCPAの必要勉強時間を調べると1,200〜1,500時間と出てくる。一見USCPAの方が大変な資格に見えるが、これは全くの逆である。

英語ではCFAの勉強時間はそのまま900時間必要となっているのに対し、USCPAの勉強時間は300-400時間と記載されてる。

USCPAに1200時間かかる日本人基準で計算し直すと、CFAレベル3まで取得するのは4000時間程度必要な計算になるが、CFAとUSCPAは同レベルの試験だと世間からは見られているので、CFAのコスパは悪い

ではどうすれば良いのか

提案1: CFAは科目を選択制にせよ

債権に興味のない人に債権の細かい定義を聞いても無駄であり、日本のマーケットを見ている日本人にUS GAAPIFRSの違いを勉強させても無駄なので、CFAは試験科目を選択制にするべき

提案2:自分で金融の勉強をしよう

CFAの試験内容は、当然ながらCFA以外のソースで勉強することが出来る。FitForBankingといったような学習サービスや、興味のある分野の金融関係の良書を読めば、資格こそ手に入らないものの、ずっと効率的に金融の知識を身に付けることが可能である

提案3:FRM(Financial Risk Manager)を代わりに受けよう

セルサイドの株トレーダーいわくFRMのほうがより実用的で、かつ踏み込んだ内容を勉強できるらしいCFAは広く浅くの知識で、実用性は低い)。数学や統計などの知識が必要になるが、データサイエンスが盛り上がっている昨今、FRMで金融数学、統計の基礎を勉強するのは、CFAに比べて実用的だと思われる。

[2022/7/10 追記]

テストの結果が出たので、新しく記事を書きました。